家庭の温暖化対策を進めるにあたって、有効と思われる政策なので、仮訳しておきます。

2010年2月11日修正

National Action Plan for Energy Efficiency

 本家ページ US-EPA(環境保護庁)内。

エネルギー効率行動計画

 2005年秋に始まったNational Action Plan for Energy Efficiency(エネルギー効率行動プラン) は、官民共同で持続可能なエネルギー効率の改善を進めることを目的とした実施計画で、電力会社、ガス供給会社、規制当局(エネルギー省と環境保護庁)、その他の関係者の協力によって成り立っている。この取り組みにより、国内の家庭、ビル、学校などで、エネルギー消費と多額の光熱費負担を削減し、新たなエネルギー需要の必要性を削減していくことができる。行動計画推進グループのメンバーは、国内のエネルギー効率投資を拡大するための主要な障害を特定し、こうした障害を取り除いたモデル事例を推進し、文章化している。推進グループのメンバーおよびオブザーバーは、たくさんの主要な関係者と協力し、それぞれの組織内および組織の枠を越えて、コストパフォーマンスのよいエネルギー効率改善への投資の関心を高め、その障壁を取り除くことを、行動計画のもとで推進していく合意をつくってきた。

目標

 エネルギー効率行動計画は、2025年までにすべてのコストパフォーマンスの高いエネルギー効率改善を導入することを目標としている。

参加者

 エネルギー効率行動計画は現在進行形の取り組みであり、60以上の主要なガス供給・発電事業者、州政府、エネルギー需要者、エネルギーサービス会社、環境やエネルギー効率に関する組織などによって構成される「推進グループ」が引っ張っている。「2025年に向けたビジョン」では行動計画の5つの勧告を実現するための枠組みを示しており、推進グループの多くの組織が支持している。

5つの勧告

  • エネルギー効率改善が優先順位の高いエネルギー資源であることを理解する
  • 資源とみなされるコストパフォーマンスの高いエネルギー効率改善を実現することに、長期的視野で深く関わっていく
  • エネルギー効率改善ができる機会やその便益について、幅広く話し合う
  • エネルギー効率改善のコストパフォーマンスが高くなるように、適切な時期に、充分かつ安定した資金を供給する
  • コストパフォーマンスの高いエネルギー効率改善が進められるよう機器補助政策を修正し、エネルギー効率投資を促すような現実的な補助率の調整を行う。

2050年に向けたビジョン

 112ページにわたるPDFファイルが用意されています。

電力会社・ガス会社がエネルギー効率改善に参加するための施策

Penni McLean?-Conner , Energy Efficiency:Principles and Practices, PennWell?(2009)の仮約

http://books.google.co.jp/books?id=uodJR4XFf04C&printsec=frontcover&dq=Energy+Efficiency&lr=&as_brr=3&ei=k05zS-yZKYj0lQTIkMiyBA

http://www.amazon.co.jp/Energy-Efficiency-Principles-Penni-Mclean-conner/dp/1593701780/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=english-books&qid=1265848071&sr=8-1

 電力やガス会社は、長らく、電気やガスを供給するための高価なインフラに投資し、それを回収するために販売量を増やすことに着目してきた。つい最近まで、エネルギー負荷を増やす手段として機器を販売することが、製造・転換・配送のための投資を効率よく回収するための常識であった。

 現在、需要端でのエネルギー効率を上げ環境負荷を低減することは、国だけでなく地域的にも重要な政策となっている。このことは、エネルギー消費を減らし、結果的に収入を減らすことになるため、エネルギー供給業者にとって望ましいことではない。健全なエネルギー供給業者ならば、収入につながる魅力的な資本へのアクセスを確保するために、必要な投資をしてシステムを拡大する必要がある。

 持続的なエネルギー効率改善投資(energy efficiency investoment)を生み出すためには、政策の変更が必要になる。「利益率設定(rate-making)」の枠組により、エネルギー供給業者がエネルギー効率改善投資に向かわせる環境をつくることができる。エネルギー効率改善の対策を選別して資金提供し、エネルギー供給ラインと機器効率が効率基準を満たすよう構築する政策も実行されている。

 「利益率設定」の枠組は、エネルギー販売を増やす必要と、エネルギー効率改善との間にある根本的な対立を解消するために必要である。共通する枠組としては、「分離(decoupling)」、「修正利益率構造(modified rate structures)」、「基本料金(fixed customer charge)」、そして「損失に基づく収入(loss-based revenue)」である。それぞれの枠組は、エネルギー供給業者がエネルギー効率改善に関わった場合の損失を補填するよう設計されている。これらの枠組により、エネルギー供給業者がエネルギー効率改善を積極的に進めるインセンティブを与えることになる。インセンティブは、株主が求める適切な利益をあげるために必要となる投資を、供給インフラに充てるのではなく、エネルギー効率改善に充てるようにしていくために必要となる。

 安定して長期的な資金調達も重要になる。いくつかの州では、需要者の負担でエネルギー効率改善投資を行うという仕組みで、安定的な資金提供を行い成功している。他の導入されている資金調達のメカニズムとしては、利益率による回収メカニズム(rate-based recovery mechanism)と資源調達資金(resource procurement funding)で、どちらも便益と還元をもたらす。

  • 利益率設定(rate-making):エネルギーは社会インフラであるため、安定供給など最低限の質を保つために政府による利益率設定がされている。現行の利益率設定では販売量が多いほど利益が上がる仕組みになっているため、エネルギー効率改善が進まない。株主が満足するように、エネルギー効率改善に応じて利益が認められる構造とする。この方法として、「分離」「修正利益率構造」「基本料金」「損失に基づく収入」などがある。
  • 分離(decoupling):販売量と利益額を分離する。追加的に利益をあげた分は、需要者に投資しないといけない。何もしなくても利益が保証されるわけではない。コストを回収する仕組みではなく、利益を回収する仕組みである。1982年のカリフォルニアの事例がある。メカニズムとして確定されたものではなく、事例も限られており、常に議論を積み上げる必要がある。利益率設定を調整することで、どう関係者が反応するのか検証をする必要がある。
  • 修正利益率設定(Modified rate structure):利益を販売量にあまり関係なくする。販売量ではなく顧客数に関連した利益とするなど。
  • 基本料金(Fixed costomer charge):需要者から固定的に徴収することで、需要者にとってもなじみ深い。たとえば電話などのように電話システムへの接続に対して負担がかかるようなもの。効率改善のために追加的にかかる費用を固定料金に上乗せするもので、需要を減らすインセンティブは働かない。ただし、消費が少ない人に大きな負担となる。
  • 損失に基づく収入(LBR:loss-based revenure):プログラム実行に伴って売り上げが減った分を補うオプション。これがあると、エネルギー供給業者が全面的にエネルギー効率改善に参加できる。直接エネルギー効率改善として投資した活動に伴う削減は補填されるが、自治体が行った省エネプログラムによる削減分は補填されない。補填率をどうするかは賛否両論あり、エネルギー効率を改善するのに適した仕組みにしてくために、検討する必要がある。

行動計画での検討

 エネルギー供給業者が事業として参加できるように、さらにいろいろな利益率設定の検討がなされています(2009年9月)。

そのほかのメモ

 電力、ガス料金に対して2%程度価格上乗せして、その金額で家庭や事業所に対する省エネ投資をするというフレームワークを考えている様子。

 2006年時点での便益評価では、年間90億ドル(約8000億円)をエネルギー利用者の省エネに投資し、15年間で1650億ドル(約15兆円)に達するが、省エネにより15年間で3535億ドル(約30兆円)の光熱費削減になる。

 15年後には4億1000万トンのCO2削減に寄与させるということ。ここには機器導入によるCO2削減だけでなく、将来増加を抑える効果も含めている。

 ちなみに現行のフランスのしくみでは、光熱費へ0.5%の上乗せ。イギリスは請求書あたり年間5ポンド(2006〜2009年)の負担。

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Last-modified: 2016-06-21 (火) 12:01:15, by 有限会社ひのでやエコライフ研究所